2008年、世界で初めて、日本文化を幅広く紹介することを目的としたメディアがブラジルに誕生しました。ジャパン・ブラジル・ネットワークテレビ(JBN)がそれです。JBNは、170万世帯を抱える最大手有料衛星放送の専門チャンネルのひとつとして開設され、2008年6月18日、日本からの最初の移民船笠戸丸がサントス港に到着してちょうど100年にあたる日からブラジル全土に対して放送を開始しました。
このJBNと連携して、サンパウロ日本文化センターではさまざまな日本文化を紹介する番組の制作を開始しました。いくつかを紹介しましょう。
『味覚の知恵』シリーズは、米、味噌・醤油、日本酒などの食材、調味料、さらには独特の食習慣など、広く日本の食文化を紹介するもので、3月までに既に11本を制作しました。
音楽分野では『ペンタトニカ』というシリーズ番組を企画、制作しています。ここでは、ブラジルで研究や活動を進めている演奏者と邦楽との関係に焦点をあて、音楽を巡る最近の潮流も紹介、J-ポップやJ-ロックもテーマとして採用しました。
美術の分野で企画したのが『建築+デザイン・コネクション』です。このシリーズでは、日本の建築様式やデザインの傾向に影響を受けたブラジル人デザイナーの仕事を紹介しながら、住宅空間や公共施設に見られる日本のデザイン概念を検証することを意図しています。
また、日本文化講座もテレビ番組化することによって、よりわかりやすく日本文化の基礎知識を紹介できるようになりました。これまでに『浮世絵の世界』と『日本の舞踏史』を制作しましたが、どちらも元基金フェローが講師となったので、フェローの帰国後のフォローアップとしても効果的な事業となりました。
JBNテレビ局はウェブテレビも開設し、全世界でインターネットを通じて視聴できます。日本在住のブラジル人や日系人にとってもJBNの番組は母国語で日本文化を知ることができる番組として人気を集めています。
2009年5月には『エリンが挑戦!にほんごできます。』(NHK制作)もJBNで放送を開始する予定で、現在字幕翻訳の準備が進んでいます。
テレビ番組制作事業ではありませんが、『カラオケ日本語学習キャラバン』もブラジル国内各地の主要都市を巡回する事業です。サンパウロで開催された2008年の最終コンテストには500人を超える観客が集まりました。
ブラジルの若者の間では、日本のポップ・カルチャーを通じて日本語への関心が高まっています。今後JBNで放送される番組によって、広いブラジルの各地で日本語や日本文化に興味を持つ人々の一層増えることが期待されます。